悲恋のエバンジェリン

春一番

Tomoさんの昨日のブログで、「世界の果までいってQ」が放映になったこと知りました。
取材に来たのは、3月半ば・・・寒かったんです。
いつ、放映されるのかわくわくどきどきとしていました。 無事放映になってよかった。

今日のトロントも久しぶりに寒かった・・・ 最高気温が6度までしか上がりませんでした。

でも、これってほぼ平年並み。 昨日までのばか陽気がおかしかったのです。 明日も気温は低いみたい。

トロントのリンゴの花のつぼみも少し勢いがなくなってしまった感じです😩

リンゴの花と言えば、赤毛のアンの冒頭にも出てくるように、プリンス・エドワード島や近隣州では、春先に、きれいなきれいなリンゴの花の季節を迎えます。
それは、5月末から6月始め。

特にノバ・スコシア州のアナポリス・バレーはリンゴ栽培で有名。
Apple Blossom Festival がこの頃行われます。
それはいわゆるリンゴ祭り🌸 収穫時期ではなく、花咲く時期にお祭りするのも粋ですよね。


(c) Tourism Nova Scotia

このアナポリス・バレーという土地、リンゴの果樹園や果実がたくさん実ることで有名な場所ですが、もう一つ、有名なものがあるのです。

それは、悲恋の物語「エバンジェリン」

日本のみなさんには、あまりお馴染みのないこの話。 ここ北米では、かなり有名。 アメリカ各地からバスを連ねて、この悲劇のエバンジェリンの土地を訪れようとやってくるほどです。その認知度、赤毛のアンにも匹敵しそうなほどですよ。

昔、1600年ごろから、このアトランティック・カナダあたりは、英国の移住者の人々、そしてフランスからの移住者の人々が暮らしていました。フランスからの移民は、西部からの農耕民族でアカディアンと呼ばれる人たちでした。この人たち、モントリオールやケベックに入植して来た人たちとは、故郷がちょっと違うのです。

エバンジェリンという女性もアナポリス・バレーのグラン・プレというところに住むアカディアンでした。
彼女は、ガブリエルという同じくアカディアンの婚約者がいて、もうすぐ結婚するということで幸せの絶頂にいたのです😍


(c) Tourism Nova Scotia

ところが、1755年、エバンジェリンがガブリエルと結婚する前夜、突然、英国王がアカディアン追放令を出したのです。
つまり、この土地からアカディアンを一掃しろと・・・いうこと。

グラン・プレの平和な村にも英国兵士が詰めかけ、女性と男性と違うボートに乗せられて、この土地から無理やり追放されてしまったのです。

エバンジェリンは、ガブリエルと離れ離れになってしまいましたが命からがらアメリカにたどり着き、そこで生活を始めます。
ガブリエルを探し続けるのですが、運命は残酷で、なかなか消息がつかめません😢💔

何年もの月日が経ち、エバンジェリンも年老いて、病院で看護婦として働いていました。 ある日そこへ、瀕死の男性が運ばれてくるのです。
一目みて、エバンジェリンはガブリエルだと気がつきます。もちろん、ガブリエルもエバンジェリンと気づくのです。 二人は、生涯をかけてお互いを捜し求めていたのです。

でも、ガブリエルは瀕死の状態。
ガブリエルはエバンジェリンの腕の中で息絶え、それを追うように、エバンジェリンも亡くなるのです😭

この物語は、「エバンジェリン」というタイトルで、アメリカの有名な詩人ワーズワース・ロングフェローが叙情詩として発表し、一躍北米でベストセラーとなったものです。

実は、エバンジェリンもガブリエルも架空の人物ですが、1755年のアカディアン追放令では、このような悲劇が多くあっただろうと言われているので、あながち作り話とは言えない深いお話なのです。

アカディアンは、カナダを追放され、遠くはアメリカのニューオリンズまで流れ着きます。彼らは「ケイジャン」と呼ばれますが、それは「アカディアン」がなまったものなのです。
「ケイジャン」スタイルの料理はスパイシーなものが多いですよね。私は大好きですが、アカディアンの料理にも通じるものがあるんですよ。

この悲劇のエバンジェリンの銅像が、アナポリス・バレーのグランプレに立っています。
そこは、アカディアンが約400年前に一生懸命開拓した干潟の農地が残されているのです。


(c) Tourism Nova Scotia

リンゴの花が咲く頃から、夏、秋にかけて、この農作物が多く実る土地は、アメリカやカナダの観光客の人たちで賑わいます。

エバンジェリンの叙情詩は、確か日本では岩波文庫から出ています。ワーズワースの詩集として。
私は、このエバンジェリンの物語が好きです。とても悲しい物語だけど、でも、いつでも必ず「愛は勝つ!」と勇気をくれると思うんです。