まぼろしの巨大要塞都市

春一番

ここのところ、TomoさんもCatswayさんも花の話題で盛り上がってるところ、私も便乗して、トロントのリンゴの花の写真をお送りします。

1週間ほど、出張でトロントに居なかったんですが、帰ってきてみたら、リンゴの花が満開になっていました。
出張前は、全くの蕾だったんですよ。春の歩みは早いようです。

赤毛のアンがプリンス・エドワード島に初めて上陸したのは6月でしたね。
マシューの馬車に揺られ、リンゴの花が満開の並木道を通って、グリーン・ゲイブルスに行くのでした。
プリンス・エドワード島のリンゴは、通常5月の終わりから6月のはじめに咲きます。
トロントまできたリンゴの花前線が早く島に届きますように💕

リンゴの花とはがらっと話題が変わって、今日は、アトランティックに残る英仏戦争の爪あとについて触れたいと思います。

アトランティック・カナダって、カナダで一番歴史の古い地区です。
カナダは、日本の歴史に比べれば、赤ちゃんのような国ですが、アトランティック・カナダでは、1000年前からバイキングが上陸し、500年前からヨーロッパ人の本格的な移住が始まったのですから、カナダ人にとっては、古きよきものがたくさん見られる、歴史を知る場所なのです。

なぜ、英国もフランスもここに入ってきたか。
一番の理由は、北大西洋に広がる優良漁場グランド・バンクスのタラの漁場の確保です。

1713年、ユトレヒト条約(スペイン継承戦争を終結させた条約)でフランスは、カナダの北東部大西洋沿岸とニューファンドランドを英国に譲渡し、わずかに、プリンス・エドワード島とケープ・ブレトン島が手元に残りました。

余談ですが、その頃は、プリンス・エドワード島は、プリンス・エドワード島なんて英国の呼び方ではなく、サン・ジャン島(Saint-Jean)と呼ばれていたのですよ。

そして、フランス軍は、1719年からケープ・ブレトン島に巨大な要塞都市ルイスバーグ(Fortress of Louisbourg)を築きました。


復元されたルイスバーグ

もちろん、英国軍と戦うためです。
港湾を望んだ町は、地形的にも恵まれ攻撃を受けにくいように作られていて、理想的な要塞都市でもあったそうです。
ルイスバーグは、タラの交易を中心に発展してゆきます。

1745年に英国軍に攻撃を受け、ルイスバーグ一旦英国のものとなります。
ところがまた、3年後には再びフランスのものとなりました。


復元されたルイスバーグ

そして1758年、再び英国軍の攻撃を受けます。
フランスの要塞の壊滅を願う英国は、この戦争で徹底的にルイスバーグを破壊してしまったのでした。

こうして、つかの間の繁栄を続けた巨大な要塞都市は崩壊したのです。

本当に、フランスとイギリスって、植民地を巡っていろいろなところで戦争していたのですよね。
カナダが出来る前という時代は、まるで戦国時代みたいですよね。

1961年、カナダ政府は、幻の巨大要塞都市ルイスバーグの歴史的価値を再考するために、本来の4分の1規模の大きさでの復元を始めました。


復元されたルイスバーグ

今では、1740年代の町の姿が、考古学者によって発掘された事物を元に見事に再現されています。
北米で一番大きな歴史復元都市となっています。

現在のルイスバーグは観光客に開放され、中庭や、当時のお店屋さん、食事場所、パン屋、兵舎、教会、などがあり、当時のフランスの衣装を着た人々が迎え、当時の生活様式を忠実に見せてくれます。


ルイスバーグ内の衣装を着た人々

食事も当時のものを食べさせてくれたり、当時の踊りを見せてくれたりと、まるで、中世の生活に迷い込んだような錯覚を見せてくれるところです。


ガチョウも飼われています

ヨーロッパの昔の生活にタイムスリップしたようなこの町、私は大好きです

今年2008年は、ルイスバーグ崩壊の250年目です。
目出度いのか目出度くないのかは、よくわからないのですが特別ツアーなども行われています。


かご作り

今でも続けられている考古学の発掘に参加したり、250年前のチョコレートの製造を教えてもらったり、と楽しそうなプログラムが一杯です。


庭園の手入れもおこないます

ルイスバーグに行くには、ハリファックスから車で6時間。
ちょっと遠い、でも遠いからこそなお更行きたくなるところでもあります。

またこのごろ、ニューイングランドクルーズが人気になってますが、寄港地のシドニーという港が近くにあります。
クルーズの上陸ツアーにルイスバーグが含まれていることもあるので、今年の秋、クルーズを予定している方は、ぜひ、ルイスバーグにも立ち寄ってくださいね。

そうそう、城壁に囲まれた町に入るとき、門番が立っていてフランス語で何か話しかけられます。


怖い顔をした門番

そのときに「Oui (はい)」とフランス語で答えなければ、イギリス軍の回し者とみなされてしまうから、くれぐれも注意ですよ